Top Page › 物語の断片化した情報 › 337番(仮)すいぞくかんのペンギンが鬼のしまへゆく顛末その6の1

    2019 · 11 · 30 (Sat) 21:29

    337番(仮)すいぞくかんのペンギンが鬼のしまへゆく顛末その6の1

    ぺんぎんくん337番6話のサムネイル画像

    ペンギンくんの戦い6の1


    どれくらい時間がたったろう。337番は荒れ狂った海の中漂っている。自然に抗う力も心もなく、思いにふけっていた。自由がこんなにきびしいなんて思いもしなかった。自由のために支払った代償は、このぼろぼろになった体。海を漂うこの状況。仲間もいないこの現状。






    こんなことなら335番がしんだことに怒らなければよかったのだろうか。看守に食ってかかったおれが悪いのか。あそこでおれは静かに暮らしていたほうがよかったのだろうか。

    今はもう、この自由がよいのかどうかもわからない。こたえのない自問自答を繰り返し、方向もなく、海の流れに身を任せる337番

    静かに目をつぶると数時間前の光景がよみがえる。

    特殊部隊VSぺんぎん


    そとは雨。目の前にはライフルやマシンガンで武装した多数の特殊部隊。何人いるんだ?と聞きたくなるくらいの数だ。水族館の出口を間違ったのが運の尽き。

    しくじった。おれは水族館裏手にある崖においつめられていた。逃げ道がなくなったんだ。園長に逃走経路を把握され、うまくここに誘導されてしまった。


    逃走中、特殊部隊とたくさん戦った。


    おれにしてはうまくやったほうだ。狭い通路を選んで、地の利を活かす作戦を思いついたんだ。小さな通路でまちぶせて、敵を各個撃破した。大人数も通路の中では不利になる。人間はでかいしさ。ちびである俺なりの優位性を活かして戦ったんだ。


    誤算だったのはあいつらの数。キリがない。倒しても倒しても追ってくる。


    図書館で読んだストーカーだよ全く。自由を手に入れるにはこれだけのスリルを味わわないといけないなんて思いもしなかった!


    そんなこんなで一人では太刀打ちできず、絶体絶命。自由、自由なんてすこし熱なってしまって頭がまわらなかったのかもしれない。どうしようもなくピンチだ。今すこし後悔している。かばってくれた仲間達、みんなすまない。


    後ろは海。じりじりと距離をつめてくるエリアeの特殊部隊。園長「337番、おとなしくもどってこい。きみはこのエリアの貴重な戦力だ。他所に流出されては困る。」


    337番は苦笑いを浮かべつつあの瞬間をイメージし、両腕から刃を出し戦闘体制に入る。


    「おれは自由のあじがしりたくなった。自分が何者かを知りたくなったんだ。道具はいやだ。なにより、かばってしんだ仲間達に報いたい。」


    同時337番の目が赤く光りだす。その自分に向けたものにもみえる小さな宣言は、相手には届かず、雷と海の音でかき消されていた。園長はそばの部隊長に告げた。「やれ。」


    特殊部隊の半数は前面、残りは両サイドから337番に近づいていく。ザッと音がした。黒い物体が空に向けて垂直に飛んでいた。

    両サイドの兵士達が銃口を上に向け、表情に笑みをつくろうとする直前、最前線の兵士の首がえぐられた。兵士は、疑問を持った顔のまま倒れた。


    つづけて、自身を横に回転させ、重なって並ぶ敵の首、頚動脈を的確に狙った。


    回転が終わり地面に伏せた所でくちばしを開き、奥の金属の筒から銃弾を数発発射した。扇形に放たれた銃弾は、数名の兵士の体にめりこむと周囲の兵士も巻き込み爆発した。


    園長と前方の兵士達は、右部隊の総崩れした現状を見てあっけにとられている。337番「戦場は疑問を持つ場所ではなく、動くところさぁ。」地面に落ちた黒い物体は仲間の亡骸であった。


    ひるんだ前方の兵士達に向け足のつめを発射し、陣形が崩れたところで一気に園長と部隊長の首をとろうと風のように動いた337番だったが、ドドドド。嫌な音を聞き動きを止めた。


    部隊長が叫ぶ。「援軍はまだまだやってくる。士気を落とすな。我々はエリアeの守備を任された勇敢な兵士だ。」兵士達にまとわりついていた重苦しい雰囲気が消える。


    このまままっすぐ進めば、きっと後から来る兵士に回りこまれ逃げられなくなるだろう。


    援軍の数もわからない。もう潮時かもしれない。こんなところまで連れてきてごめんな。地面で静かに横たわっている仲間に問いるよう話した。


    337番は担ぎやすい兵士の躯を盾に、ジグザグに後ろへ撤退し盾になりそうな岩陰に隠れた。


    岩陰から相手の出方を確認した337番の顔が青くなり、目の色も変わった。「あれはRPGタイプじゃないか。水族館の図書室でみたぞ。おれを完全に消去する気だ。」



    337番は崖下の海を見下ろし、銃弾の雨がやんだところで岩陰から水族館をみた。「また帰ってくる。次帰ってきたときは、みんなをあの牢獄から助けるときだ。そのときまで。」



    園長は拡声器を取り出し337番に投降を呼びかけたが遅かった。337番はもう岩陰にはおらず、直後、崖の下で何かが海に飛び込んだ音がした。





    photo by pixabay
    追記:記事の行間を修正。もう少しつめて表示させてみます。

    シンプル木製ラック幅900

    関連記事
    [Tag] * ぺんぎん * 小説 * 337番

    最終更新日 : 2020-02-05

    Comments







    非公開コメント